The Negligible Lab

Astray in the forest of electrical and electronic circuits. Adrift in the gap between time and frequency domains. 独立独歩を是とする。

近況報告

5月以来更新が滞っており,大変遺憾です(?)。本業のお仕事が少し多忙になってきたことと,7月あたりから諸事情につきスウェーデン語を学び始めたため(主にDuolingoにて),車輪形倒立振子の開発やLTspiceの勉強への興味関心が一時的に置き去りになってし…

Pythonによる車輪形倒立振子の線形化と最適レギュレータ

はじめに P計画 Pythonの数式処理ライブラリSymPyには力学系を取り扱うためのsympy.physics.mechanicsというモジュールがあります(以降,“SymPy Mechanics”とも呼びます)。本ブログでは前回,このSymPy Mechanicsの仕組みを活用して車輪形倒立振子の運動方…

Pythonによる車輪形倒立振子の運動方程式の導出

はじめに P計画 前々回,前回にて台車形倒立振子の運動方程式を導出し,シミュレーション,アニメーション,線形化,最適レギュレータの作り方について書き散らして参りました。本記事以後,いよいよ台車形から車輪形の倒立振子に歩みを進め,運動方程式の導…

Pythonによる台車形倒立振子の線形化と最適レギュレータ

はじめに P計画: 倒立振子の思ひ出 筆者のメインPCは11年物のSandy Bridge (Intel Core i7-2600K)を使用した骨董品です。そのHDDの奥底から,はるか昔の実験レポートが出土しました*1。今でも図1のようにMicrosoft Wordで開くことができます。 図1: はるか昔…

Pythonによる台車形倒立振子のシミュレーション

はじめに P計画 車輪形倒立振子を作る──この目標に対して問題を分解しながらアタックするため,前回にて床を転がる車輪のシミュレーションとアニメーションをPython (+ NumPy, SciPy, Matplotlib)で実現した経緯をまとめました。次は振り子をシミュレーショ…

Pythonによる車輪のシミュレーションとアニメーション

はじめに P計画 2023年を迎えて2月に入り,その2月も終盤に差し掛かろうとしています。三寒四温──もう春が近いですね… 筆者が年初に思い描いた目標の1つに「車輪形倒立振子を作る」があります。ESP32等のマイコンモジュールとMPU6050等のジャイロセンサ,モ…

2次遅れ系の時間応答と減衰係数ζについての素朴な疑問

はじめに 今回は古典制御理論の初歩的なある事柄に関して筆者が抱いていた素朴な(あるいは幼稚な)疑問に関する書き散らしとなっています。あらかじめご了承下さい。 さて,2次遅れ系 のインパルス応答やステップ応答は,減衰係数ζ (> 0)の値によって3つに…

ULPを活用した電池駆動ESP32雨センサシステムを作る

はじめに 明けましておめでとうございます とうとう昨年(2022年)の記事がただの1件から増えることがないまま2023年を迎えてしまいました。令和も何ともう5年です。さらにはもう2月ですね。 さて,新型コロナウイルスの流行が始まってから,筆者はほぼ在宅…

ESP32マイコンで商用電源品質監視装置を作る

はじめに 本ブログも実質的に3年目に入りました。このところ半年以上も新しい記事を投稿できておりませんでしたが,一応,生存はしております。筆者が多忙を理由に怠惰ゆえに本ブログを放置していた間に,世界史を画するような大事件がいくつも起こりました…

Raspberry Piで地震計を作る ④ 十字配線基板・HAT化編

はじめに 晩秋から年末へと時が移ろいつつありますが,いかがお過ごしでしょうか? 今朝は筆者の住む街でも氷点下を記録しました。寒くなって参りましたね。今回も残念ながらぱわみのある記事ではありませんが,お付き合い下さい。 さて,前々々回*1,前々回…

Raspberry Piで地震計を作る ③ センサ・全体構成編

はじめに Raspberry Piによるマイ地震計を作るため,前々回にて計測震度計算プログラムを,前回にてタイマ割込みやマルチプロセッシングなどリアルタイム処理を作って参りました。今回は,Raspberry Piに加速度センサとOLEDディスプレイを接続し,プログラム…

Raspberry Piで地震計を作る ② リアルタイム処理編

はじめに 前回と今回で,Raspberry Piを用いたマイ地震計について書いております。前回は加速度の時系列データから計測震度を計算するPythonプログラムについて述べました。 前回挙げた開発課題を再掲します。 震度計算プログラムの実装 システムコールsetit…

Raspberry Piで地震計を作る ① 震度計算編

はじめに 世界の地震の10%以上が日本で発生している──。巷間よく言われていることですが,先日も東京23区と埼玉県で10年ぶりに震度5強を観測したばかりであり,地震について考えない日はないと言っても過言ではないでしょう。 地震が発生した際に,気象庁の…

FFTを訪ねて[後編]PythonとC++で作ってみる

はじめに 11月に入っていよいよ秋が深まって参りましたが,いかがお過ごしでしょうか? さて,前記事にて,高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform, FFT)に対する筆者なりの理解の仕方をまとめました。周波数間引き(decimation-in-frequency)型のCooley-Tu…

FFTを訪ねて[前編]電気屋としての理解を探る

はじめに FFTと私 高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform, FFT)は,通常の離散フーリエ変換(Discrete Fourier Transform, DFT)に比べて非常に高速なアルゴリズムとして知られており,ランダウの記号を用いると,DFTの計算量がO(N2)であるところ,FFTではO…

M5Stackで遊ぶ ~浮遊静電容量で系統周波数を測る~

はじめに 概論 電力系統の周波数は,言わずもがな,東日本では50 Hz,西日本では60 Hzです。しかし,いつもピッタリ50 Hzや60 Hzとなっているわけではなく,それぞれ50 Hz,60 Hzを中心としながらも,常に揺らいでいます。発電が消費よりも大きければ周波数…

LTspiceによる三相PWM整流器の上位制御とノーズカーブ

はじめに サイリスタの転流を交流側の電圧に依存している他励インバータでは,電力系統(以下,単に「系統」とも呼びます)の短絡容量が小さくなると(=系統が弱いと)安定運転が難しくなると言われています。これに対して,IGBT (insulated-gate bipolar t…

数値表現のインピーダンスをα-β座標系からd-q座標系に移す

はじめに 前記事にて三相LCL回路のd-q座標系におけるインピーダンスをHarnefors氏の論文に基づいて(SymPyの力添えを拝借しながら)導出し,LTspiceによる周波数スキャン(frequency response analysis, FRA)の結果と一致することを確認しました。 negligible…

三相LCL回路のd-q座標系におけるインピーダンスを求める

はじめに 系統連系インバータと電力系統の相互作用によって,システムが不安定になることがあります。本ブログでは,過去の記事にて電流制御系と系統インピーダンスの相互作用について検討したことがあります。系統連系インバータの外乱応答(インピーダンス…

Raspberry PiとFlaskでスマートリモコンを作る

はじめに 今回のテーマは「家族の役に立つ工作」です。 泊まりがけの旅行から帰宅すると,戸締まりした部屋の中は真夏であれば蒸し風呂のように,また,真冬であれば冷蔵庫のように感じられます。帰宅する数時間前に外出先からエアコンを運転できれば,家に…

Raspberry PiでBLDCモータを120°通電制御する

はじめに 本ブログの前々記事にてブラシレスDC (BLDC)モータの120°通電制御について書きました。STMicroelectronicsのモータ制御開発キットP-NUCLEO-IHM001の制御装置はもちろんSTM32マイコンの載ったNucleo F302R8です。 このNucleoをRaspberry Piに繋ぎ替…

LTspice用制御ライブラリContraille ~概要編~

はじめに 随分と間が開いてしまいましたが,如何お過ごしでしょうか? さて,今年(2021年)の元日,ぱわみ社さんより「パワーエレクトロニクス」第2号が発行されましたが,大変光栄なことに,本ブログの内容を基にして私もそこに寄稿させて頂きました。まさ…

ブラシレスDCモータのホールセンサ付き120°通電制御

はじめに モータ制御への思い 交流電動機の可変速制御──。私のごく個人的な思いに過ぎませんが,そう,それこそがパワエレの本家本元ではないでしょうか。 パワーエレクトロニクスを学び,(ある程度)実践してきた私ですが,モータ制御を理解していないこと…

LTspiceで三相PWM整流器を作る ~直流電圧制御編~

はじめに 三相PWM整流器および単相を含む一般の系統連系変換器においては,交流電流制御系の上位(外側)に直流電圧制御系を設けます。 直流電圧を制御するためには交流電流を制御する必要があるとも言えます。 マイナーループである電流制御系に対して,直…

LTspiceで三相PWM整流器を作る ~d-q座標系編~

はじめに 秋分を過ぎ,本格的に季節が巡って参りましたね 前記事よりまた間が空いてしまいましたが,三相PWM整流器の直流電圧制御について,私の理解が非常に浅かったことが分かり,改めて考え直していたところです。 本記事では,まず,前記事で宿題となっ…

LTspiceで三相PWM整流器を作る ~モデル作成編~

はじめに 前記事から間が開いてしまいました。もう秋に入りつつありますが,まだまだ暑い日が続いていますね。 本記事では,LTspiceで三相PWM整流器(回生もできるので,一般の三相系統連系変換器*1として考えてください)を作った過程を書いてみました。 自…

系統連系インバータの電流制御と系統インピーダンス

はじめに 本ブログでは,電流制御とその安定性に関する記事をいくつか書いて参りました。例えば,下記記事では,サンプル & ホールドと1サンプル遅れを考慮した場合の安定性について,連続時間系に近似した伝達関数に基づく考察を加えてみました。 negligibl…

NumWorksのグラフ関数電卓でナイキスト線図を描く

はじめに フランスのNumWorks社によるグラフ関数電卓(本記事では便宜上,電卓についても「NumWorks」と呼びます)は,比較的低価格,MicroPython搭載,ファームウェアアップデートが頻繁,ハードウェア・ソフトウェアの仕様が公開されている等の特徴を有し…

伝達関数の直接的プロット法と電流制御系

はじめに 線形連続時間時不変システムの入力と出力をラプラス変換(s領域で表現)し,出力と入力の比(=出力÷入力)をとったものを伝達関数と呼びます。 入力が単位インパルス(δ関数)である場合,そのラプラス変換は1ですから, 伝達関数は単位インパルス…

続・LTspiceによる電流制御のシミュレーション

はじめに 先日の記事で,LTspiceによる電流制御のシミュレーションについて述べました。 negligible.hatenablog.com この記事の中で私個人としてひとつの発見と言えるのは, 操作量に対してむだ時間T,フィードバック量に対して窓Tの移動平均フィルタを施し…